2009年08月29日
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渋谷区/重要文化財 旧朝倉家住宅

Written By: 川俣 晶連絡先

 今日は旧朝倉家住宅に行ってきました。理由は、「まだ行ったことがない場所にどんどん行ってみよう!」というポリシーにあります。いや本当に、23区内にもたくさん行ったことがない場所があるのですよね。遠くまで旅行に出かけなくても行き先は山ほど。

旧朝倉家住宅

代官山 §

 代官山といえば、東横線で渋谷駅から1つめ。

 DOS/Vの教祖といわれた西川さんのC.F.Computingの所在地だった場所です。(もしかしたら、今でも?)

 そういうわけで、知らない場所ではありません。

 しかし、具体的にどのような場所なのか、という土地鑑はありませんでした。つまり直感的に、他の土地との位置関係を把握できていなかったわけです。

 ところが、最近になって中目黒に注目した結果、代官山とは中目黒から見た目黒川の対岸にあたる場所だと分かりました。更に、初台から神泉を経て南へ下る旧山手通りの通過点であることも分かりました。

 そして、問題の旧朝倉家住宅は目黒川に向かう涯線を利用した庭園を持つ邸宅です。目黒川といえば、近所の世田谷方面の河川水路の行き先であり、無縁な場所とは言えません。

 そして、現地に立って納得しましたが、代官山という土地はまさに目黒川の谷と渋谷川の谷に挟まれた台地であり、まさに山と呼ぶにふさわしいムードを持ち、東横線が代官山駅西側で通過するトンネルはまさにその山を貫くものでした。

 つまり、なんとなく渋谷の次の駅、という曖昧な把握から、具体的な地理的な把握に進化できました。

旧朝倉家住宅 §

 第1印象はかなりイマイチな感じ……でした。

 デザインは煮え切らないシオシオ感が漂い、2階に上がる階段は乗ると歪んで大きな音が出ます。

 ところが奥に進むにつれて急に印象が変わってきました。渋くバランスが取れ、バシッと堅固に構成され、趣味や趣向も見事です。奥の降りる階段はがっしり安定して音も出ません。

 そう思って見ると、庭園も違って見えます。今は見えない目黒川や遠くの風景を前提とした借景を想定して見ると、傾斜地に作られた庭園を見下ろす部屋からの景観は面白いものだと思えます。

 杉の木目を意匠とした数寄屋座敷なども、かなり面白い趣向ですね。

 というわけで、これは文句なく面白い建物だと思います。

印象 §

 実は、「影」「陰」「暗」「隠」といった印象を持ちました。内側に対して強烈に何かのプレッシャーを放ち、それを外に対して隠す建物です (建物に囲まれた中庭と池はそれを象徴的に示す)。しかし、それはそれで良いのです。詳しい話は省きますが、それもまた建物の魅力です。